40周年記念事業終了の報告(会長 坂田 拓司)

 11月9日(日),熊本市動植物園を会場に開催した,設立40周年記念シンポジウムは盛会のうちに終了しました.
 2023年から企画の検討を始め,出版物やシンポジウム,研修旅行など様々なアイデアが出ました.その中で,本会の原点であるカモシカの窮状を鑑みて,これを取り上げた企画で進めようと方針が決まり,シンポジウムに取り組むことにしました.期日・会場・テーマ・助成申請先などの案を2024年度末までに決定し,今年度総会での承認を経て本格的な準備に入りました.80名規模の講演会やシンポジウムの企画は初めての取り組みで,試行錯誤の連続でした.蓋を開けてみると当初予定よりも大幅な参加者を得て,途中でイスを搬入し,レジュメが不足するほどの盛況でした.参加者のアンケートや直接伺った感想からは,シンポジウムの趣旨は十分に伝わったと感じています.
 取り組みの中で大きな成果と感じたのが,新たなつながりが生まれたことです.会場に選んだ熊本市動植物園は(公社)日本動物園水族館協会が掲げる4つの役割のうちの一つ「野生動物を守って,次の世代に伝える(希少動物の保護)」の対象としてカモシカを視野に入れています.今回,共催という形で私たちとタッグを組まれましたが,その流れの中で傷病個体の一時保護や域外保全が視野に入ってきました.また,イラストレーターのコーダ・ヨーコさんや画家のadoさんとの展示会と,私たちのシンポジウムとで互恵関係が構築できました.異なる分野の方との出会いは今後の思いがけない進展につながるかもしれません.さらに,助成をいただいた一本の木財団さんや名義後援をいただいた各機関とのつながりは今後も大切にすべきです.
 一方,私個人としてはいくつかの課題も感じています.一つはこのようなイベントに不慣れなため,準備がスムースにできなかったことです.二つ目は,取り組みが会員の皆さんに十分に浸透できなかったのではないかということです.展示用の写真提供や当日の準備等にご協力いただいた会員のみなさまには本当に感謝しています.また,当日,リモートも含めて参加された会員は35名ですし,動植物園の展示をご覧になった方もふくめると,半数以上の方が参加していただいたと思います.ただ,感想やご意見は数えるほどしか届いていないことが気になっています.今後の本会の活動も含めて,忌憚なきご意見を伺いたいと思います.この点,これからでも構いませんのでよろしくお届けください.
今年の40周年事業はシンポジウムで終わりましたが,もう一つ,子ども向けのカモシカ保全啓発教材の開発に取り組む予定です.詳細は来年度総会時に提案します.今後もよろしくお願いします.
 ※40周年記念事業については2026年3月末発行予定の会誌13号で特集を組み,基調提案や事例報告等を掲載いたします.

40周年記念シンポジウム(アンケートの紹介)

  • 今日まで熊本にもカモシカが生息していること自体知らなかったため,今日参加して,カモシカの現状を知ることができ良かった.(20代)
  • カモシカ減少の理由,保全の方法について正しく知ることができて,とてもおもしろかったです.また,事例報告について詳しく知ることもでき,普段あまり調べることのないところにも触れることができ,もっとくわしく知りたいと思いました.(10代)
  • 多くの方々の参加があり良かったと思います.教育の観点から意識を高めるべき,という考え方.それで,ネットワーク(行政間,行政ー住民)を強めることが大事だと思います.(60代)
  • 参加者の高齢化(自分を含め)がこの先にどういう影響をもたらすか…(70歳以上)
  • 文化財行政と環境行政との関わりがよく理解できた.(60代)